小林泰三を推すために読むべき5冊をおすすめ。

読書

皆さんは、推し作家がいますか?本ブログでは人生を豊かにするために、推し作家を作る事を推奨しています。詳しくは「推し作家を作る」という、読書の楽しみ方。で書いています。今回は小林泰三先生の小説を7割くらいは読んでる僕が、小林泰三先生の魅力と、推すために読むべき5冊を紹介します。

小林泰三の魅力

皆さんは小林先生を知っていますか?初耳の方も多いかもしれませんが、「アリス殺し」という本のタイトルなら聞いたことがあるかも知れません。その著者です。作品のジャンルとしては、SF、ホラー、推理と言われますが、イメージはグロテスク・ロジカル・ファンタスティックといった感じです。すみませんファンタスティックはノリで言いました。

では、小林泰三先生の魅力は何でしょう。いろいろありますが、あえて絞るとするなら以下の3つになるかと思います。

  • リアルかすら分からない、やけに精密なグロ表現
  • あくまで論理的に進む、展開や会話
  • そこに宿る超現実的、幻想的な世界観

あまりピンとこないかもしれませんが、こんな感じ。小林泰三先生の魅力についてはいつか別記事で語りたいです。

小林泰三にはまれる人

さて、小林泰三先生はおすすめなのですが、誰にでもオススメ出来るという訳ではありません。個人的には、グロいのがある程度好きで、緻密な設定が好きで、そして「少しずれた会話」みたいな物が好きな人に、特におすすめです。

逆にグロいのが無理な人は、しんどいと思います。もちろん、グロなしでも楽しめる作品もあるのですが、ドはまりすることは難しいかもしれません。そんな人は、グロさ控えめの作品だけを選んで楽しめばいいかと思います。

そして小林先生の作品は、ハードSFと呼ばれる、少し難しい設定の作品も多いです。これが好きな人にはたまらない訳ですが、しんどいと感じる人もいるでしょう。もちろん、そんなこと気にせず楽しめる作品も多くあります。

小林先生の魅力はたくさんあるのですが、一つ一つの癖が強いのです。ハマる人はとことんハマるが、無理な人、そんな作家さんです。もちろんグロさやSF要素以外の、文体やキャラの魅力もあります。だから、その内の一つにでもハマれて、他の要素がある程度看過出来る人がハマっていくはずです。ちなみに、完全に憶測ですが貴志祐介先生が好きな人とかが好きそうかな、と思っています。

おすすめの5冊と順番

割と受け付けない人も多いと書いた後ですが、オススメの5冊ではなるべく癖の無い作品からオススメしていきます。はじめは読みやすく誰でも面白い作品から読んでいただいて、だんだんと小林先生のディープな世界に触れていただけたらなと思います。

失われた過去と未来の犯罪

1冊目は「失われた過去と未来の犯罪」です。全人類が10数分ごとに記憶が消えてしまうようになった世界のお話です。この作品の面白いところは、1部と2部に分かれている事です。1部では記憶が消えてしまうようになった瞬間の世界の人々の様子がサスペンス的に、2部では記憶が消える事に対応した数年後の世界での、事件がコメディタッチな短編集として書かれています。

記憶が消えるというありがちな設定から、展開を広げる発想力。そして、ありえない設定なのに、リアルに感じさせる筆力、といった小林先生の作家としての凄さが感じられる作品です。この作品に関しては少しSF要素はあるものの、グロさは全くなく、誰でも楽しめるかと思います。ぜひ、小林先生を推すかどうかは置いておいても、手に取ってほしい作品です。

海を見る人

2作目は、僕が小林先生の作品史上最も美しいと思っているSF短編集「海を見る人」です。表題の「海を見る人」は時間の進み方が違う山の村と浜の村にすむ男女の恋の物語です。こう聞くとどうしてもありがちに聞こえてしまいますが、泰三先生ならではの緻密な設定とその設定から生み出される美しい愛の結末に、ただただ悶えます。そのほかにも時間と空間と愛をテーマにした短編(僕の勝手な感想)が収録されており、一つ一つにしっかり心が焦がされます。

この作品も良いところは、設定が作りこまれたハードSFなんですがそこだけが魅力ではないので、細かいことは気にせずにファンタジーとしても読めるという事です。しかも、設定もしっかりしてるのでそこを深く読んでも面白いという2度おいしい作品になっています。もちろん、グロ要素もなしです。ある程度勧めやすく小林先生の魅力を伝えられるという意味では、最強のだと思っています。ぜひご賞味あれ。

因業探偵 新藤礼都の事件簿

あまり推していませんでしたが、泰三先生はキャラも面白い。小林泰三作品には、最強キャラとの呼び声も高い岡崎徳三郎通称徳さんや、超次元探偵Σなど作品を超えた人気キャラが多く存在します。そんな人気キャラの一人、最高の頭脳と最悪の性格を持つと称されるヒロイン、新藤礼都の活躍を描いた「因業探偵 新藤礼都の事件簿」が3作目のオススメです。

今までの2作と比べてもかなりポップに読めて、泰三先生の書く会話劇の面白さが良く出ている作品です。これが面白いと感じる人は、厄介なキャラがたくさん出てくる小林泰三作品の楽しめる人だと思います。「海を見る人」との落差を感じていただき、いろいろ書く作家さんなんだなと知っていてだければ幸いです。

アリス殺し

次は最も有名な作品と言っても良いのではないでしょうか、「アリス殺し」です。毎日同じアリスの世界の夢を見ている事に気づいた主人公栗栖川亜理が、現実と夢の世界でリンクした事件に巻き込まれていく。というストーリーで、いつもながらの緻密な設定、それを活かしたミステリとしての展開の面白さ、そしてアリスの世界を彷彿とさせるナンセンスな会話劇、と小林先生が本気エンタメを書いたらこうなるのかとドキドキしっぱなしの作品です。

しかし、この作品にはとんでもなくグロ表現があります。知人に勧めたところ、「好きなところはあるんだけどグロすぎてちょっと」と言われてしまったほどです。だからきっとどれだけ、他の要素が好きでもグロいのが無理な人には無理な作品です。だからこそ、1,2冊目にはおすすめできません。グロいのが無理な人は、どうかグロくない作品を探してお楽しみください。

逆にこれが面白く読めた人は、小林泰三先生の作品が肌に合っている人です。もう他のどの作品を読んでも生理的に無理になる事はないでしょう。さあ、いっしょに小林泰三の沼にはまりましょう。

脳髄工場

さて、ここまで来た人のオススメしたいのが、小林ホラーの魅力が詰まった短編集「脳髄工場」です。表題作「脳髄工場」犯罪抑制の為に人間に、人工脳髄を差し込むという狂った世界で、人工脳髄にあらがう少年の物語です。人工脳髄が差し込まれる精密な描写や周り人間の考えの気持ちの悪さ、そして結末の後味、すべてにおいてリアルな不気味さが漂います。表題作以外にも、「C市」「声」など心地悪さの詰め合わせのような短編集です。

この作品は、今までの作品と比べ、本当に小林先生らしさが全開といった感じです。どちらが本当の小林先生だとかは、言う気はないですが、ホラーの小林作品はより他には代えられない作品に感じます。脳髄工場まで読んで、ハマったあなたはもう小林泰三なしでは生きられないのでは?

最後に

小林泰三先生は、グロい、怖いというイメージから人にはどうしても勧め難かったりします。しかし、小林泰三先生にはそれだけではない魅力が、たくさんあります。特に晩年の作品には、読み易い作品も多くより沢山の人が楽しめると思います。ぜひ、「グロいんでしょ」「小難しいんでしょ」と倦厭せずに自分に合った作品を楽しんでください‼

コメント

タイトルとURLをコピーしました