「推し作家を作る」という、読書の楽しみ方。

読書

皆さんは読書を楽しんでいますか?僕は楽しんでいます。読書にはいろいろな楽しみ方あると思います。僕は一人の作家の作品を沢山読むタイプで、そのことを推し作家を作ると表現しています。本記事では作家を推す事の楽しさについて語りたいと思います。

作家を推すとはどういった行為か。

僕の中で作家を推すとは、著作を沢山読むだけでなく、その来歴や人となりを知る事も含んだ行為です。もちろん、作家を推すことの基本には著作を網羅的に読むという行為があります。しかし、そのほかにも著作を通して人となりを想像したり、小説以外の文章を読んだり、受賞歴や学歴や職歴を知る事は、読書の楽しみを増幅させると思います。

推し作家を作るメリット

推し作家を作る事には次のようなメリットがあります。

  • 次々に読みたい本が出てくる
  • 作品間の繋がりが分かる
  • 次の推し作家候補が見つかる

次々に読みたい本が出てくる

第一に推し作家の作品は全部読みたくなります。読書をする上での悩みの一つが「次に何を読むか」です。その悩みすら読書の楽しみではあるのですが、やはり次から次へと読む本が決まる幸福を味わいたい時もあるでしょう。一人の作家を推しているととりあえずその著作しか読まない時期がやってきます。

さらに、推し作家の作品はほとんどがあなたの感性に合うものです。万が一あまり満足できなくても「今作はいつもと違うな」「何がしたかったのだろうか」と考える楽しみが生まれます。推し作家の著作数だけ楽しめる事が確約された作品が存在するという事です。はい。幸せです。

作品間の繋がりが分かる

全く関係のないような作品の間にファンだけが分かるような繋がりを用意する作家はかなりいます。伊坂幸太郎先生などが顕著でしょうか。様々な作品の出来事が同じ場所で起きているという場合もあります。宮沢賢治の「イーハトーブ」などが有名ですね。一人の作者を推すことで、このようなつながりを余すことなく楽しむことが出来ます。

また作品間の繋がりには世界観の中だけではない繋がりもあります。それは、著者の成長や変わらない思想です。村上春樹を強く推している知人は、「村上先生が成長して人間を深く知るほどにそれが作品に反映される。『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』の先に『海辺のカフカ』がある」とおっしゃっていました。何となく分かる気がします。

次の推し作家候補が見つかる

一人の作家を推し、その作品を沢山読み、その人となりを知った先で、別の作家に出会う事があります。僕は西尾維新先生を推した先で京極夏彦先生に出会いましたし、舞城王太郎先生の先には清流院流水先生がいました。

人は、多かれ少なかれストーリーや繋がりを求めています。小説や物語が好きならなおさらです。作家を推す営みは、ストーリーを作品の中から作品間に、そして作家間にまで広げてくれます。

僕の推し作家

僕の推し作家は、以下の四人です。

  • 伊坂幸太郎先生
  • 西尾維新先生
  • 小林泰三先生
  • 舞城王太郎先生

ここからは、僕が彼らを推し始めたいきさつや推す理由を書いていきます。

伊坂幸太郎

伊坂幸太郎先生は、僕の最初の推し作家です。中学生の頃『死神の精度』から入り一発で好きになりました。しかし、次に読んだ『魔王』が当時は良く分からず、しばらく伊坂先生の作品から離れてしまいました。それから少ししてた、またま手に取ったデビュー作の『オーデュボンの祈り』を読んでガッツリ嵌りました。そこからは、かなり連続して伊坂作品を読んあさりましたが、本当に推し始めたのは『ゴールデンスランバー』を読んだ時です。もっと正確に言えば『ゴールデンスランバー』のあとがきを読んだ時という事になります。

『ゴールデンスランバー』のあとがき書かれているのは、インタビュアーの木村俊介さんです。 あとがきには木村俊介さんの言葉を通じて、伊坂先生は自分の作品をどう見ているのか、そして伊坂先生にとって『ゴールデンスランバー』がどんな位置付けなのかという事が書かれています。そのあとがきを読んで僕は初めて物語の先にいる作者の存在を意識しました。それからというもの、僕は推し作家の著作を読み通し、共通点や変化を読み楽しむことをするようになりました。

伊坂幸太郎を推す為に読むべき5冊をおすすめ。

西尾維新

西尾維新先生は化物語などが有名な、ミステリ・ラノベ作家です。僕は中学時代に西尾先生原作の漫画『めだかボックス』に嵌り、浪人時代に『化物語』に嵌り、ついに大学時代に西尾先生を推し始めました。西尾先生は多作で執筆速度が速く、多作で有名です。作品を網羅しようとしようと思うとずいぶん骨が折れますが、それだけに推しがいがある作家です。

作品が多いという事は、それだけ出てくるキャラクターが多いくなります。そのキャラの語り口が西尾先生の魅力の一つにもなっているのですが、作品を横断して読むと少し違った見方が出てきます。それぞれに意志を持ったキャラにいくつかのタイプや考え方の共通点のようなものが見えてくるのです。するとそれが西尾先生の癖や好みの考え方なのかもしれないと想像が膨らみ、読書に新しい楽しみが現れてきます。

西尾維新を推すために読むべき五冊をおすすめ。

小林泰三

小林泰三先生は、ミステリやホラーを中心に執筆されている作家です。その唯一無二の描写力と徹底した論理性から生み出される作品と真面目な人間性が小林先生の魅力だと思います。もちろん作品にドはまりしていたのですが、実は僕が小林先生を推すようになったのはTwitterがきっかけです。小林先生は一時期、毎日京都の最高気温をtweetされていて、それを毎日リツイートするのが僕の楽しみでした。当時大学生だった僕は、それで少し小林先生に近づいた気がしていました。

小林先生は、2020年の11月にお亡くなりになられました。その時の周りの人間の反応からも本当に愛されていたんだなと分かります。晩年、専業の作家になった後はかなりのペースで作品を書かれています。時期によっての小林先生の作風の違いや、様々な挑戦を読むのも楽しいかもしれません。

小林泰三を推すために読むべき5冊をおすすめ。

舞城王太郎

舞城王太郎先生は、この中で唯一純文学を中心に執筆されている作家です。僕が初めて読んだ『阿修羅ガール』も芥川賞の候補になった作品で、ゴリゴリの純文学です。純文学とは何か本当はよく分からないのですが、僕の中では舞城作品こそが純文学だという事になっています。

舞城先生に嵌ったころの僕は、いろいろな作家の作品を読読んでいました。中にはある程度嵌った作家もいたのですが、今までのように推すという事はなく、もう推し作家は見つからないのかもしれないと思っていました。そんな中『阿修羅ガール』に出会い一瞬で推し始めました。そういう意味では舞城先生は、たくさんの作家の中から探し当てた僕の推し作家なのかもしれません。

舞城作品は、一作一作僕の中に確実に思い一撃を残してくれるました。当時、付き合っていた女の子に振られることがほぼ確定した日、九十九十九を読んで夜を超えたのは良い思い出です。

舞城王太郎を推すために読むべき5冊をおすすめ

最後に

昨今は『推す』という言葉が、様々な場面で使われるようになりました。『推す』という行為は、それまでの『ファンになる』『応援する』事と何が違うのでしょうか。僕は、『推す』自分の人生の一部を作品や人物や偶像に委ねるという事だと思っています。人の命は思ったよりも尊く、ひとりではそのエネルギーを抱えきれなくなることもあるでしょう。そんな時生きるエネルギーを預けておける場所、そして生きるのがしんどくなった時に元気を引き出せる場所が『推し』なのではないかと思ったりします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました