モホ面の深さの求め方。公式を丁寧に導出します。

学習

今回は高校地学扱う、モホロビチッチ不連続面の深さを求める公式

$$d=\frac{L}{2}\sqrt{\frac{v₂-v₁}{v₂+v₁}}$$

の導出をやっていきたいと思います。出来るだけ、細かい計算方法まで示したのでぜひ参考にしてください。

モホ面とは?

モホロビチッチ不連続面通称モホ面とは、地震学者モホロビチッチが発見した地殻とマントルの境界面の事です。

地球の内部は外側から、地殻→マントル→外核→内核という構造になっています。その内、地殻とマントルの境界面がモホ面です。

地震学者モホロビチッチは地震波の速度の変化から、このモホ面の存在を発見しました。またその深さ、つまり地殻の厚さは、大陸で平均約35㎞、海洋で5~10mと言われています。この厚さもまた、地震波の速度の変化から求められます。

走時曲線の折れ曲がり

地震波の伝わり方をグラフにした走時曲線の折れ曲がりから、モホ面の深さを計算することが出来ます。

走時曲線とは、地震波の到着時刻を縦軸に、震央からの距離を横軸に取ったグラフの事です。この走時曲線は、震央距離が200㎞ほどの所で折れ曲がる事が知られています。これは、地殻とマントルで波の伝わり方が違う事が原因です。波の伝わる速度の遅い地殻を通ってきた波を直接波、速いマントルを通ってきた波を屈折波と言います。この屈折波が直接波よりも先に届いた点で走時曲線は折れ曲がるも事になります。

この走時曲線から、地震波に関して「地殻中での速度」「マントル中での速度」「直接波と屈折波が同時に届く震央距離」が分かります。走時曲線は時間を縦軸、距離を横軸に取っているので、その傾きの逆数は地震波の速度を示します。したがって折れ曲がる前の傾きから「地殻中での速度」、折れ曲がり後の傾きから「マントル中での速度」が求められます。また、折れ曲がっている点での距離が、「直接波と屈折波が同時に届く震央距離」です。この三点から、モホ面の深さが求められます。

公式導出の道筋

では、図1を例に、\(v₁,v₂,L,\)からモホ面の深さを計算する公式を導出する道筋を解説します。導出の道筋は大きく分けて3ステップです。

  1. 直接波の走時を求める
  2. 屈折波の走時を求める
  3. 2つをイコールで結び整理する

まず、直接波の走時を求めましょう。この時、震源からの距離を\(L\)地震波の地殻での速度を\(v₁\)、マントルでの速さを\(v₂\)、そしてモホ面の深さを\(d\)とします。直接波、屈折波の到達する経路は、図1(下図)のようになります。ここで、直接波の距離は\(L\)、速さは\(v₁\)なので、走時\(t₁\)は、\(t₁=\frac{L}{v₁}\)となります。

次に、屈折波の走時を求めます。ここでは、図1のように屈折波が地殻中を進む道のりを\(L₁\)、マントル中を進む道のりを\(L₂\)とおいて求めます。すると、屈折波の走時\(t₂\)は地殻中を進む時間とマントル中を進む時間の和なので、\(t₂=\frac{2L₁}{v₁}+\frac{L₂}{v₂}\)となります。

\(L\)が直接波と屈折波が同時に届く震央距離である時、t₁とt₂は等しいので、

$$\frac{L}{v₁}=\frac{2L₁}{v₁}+\frac{L₂}{v₂}$$

となります。これを整理すると、モホ面の深さを\(d\)を\(v₁,v₂,L,\)で表すことが出来ます。

図1地震波の伝わり方

スネルの法則

さてここで、式を整理するために必要な「スネルの法則」を確認しておきましょう。高校で物理をとっていた人はご存じかと思いますが未習の人は初耳かもしれません。スネルの法則とは媒質の境界面における、入射波と屈折波の関係を表した法則である。概要は以下の通りです

入射角を\(\theta₁\)、反射角を\(\theta₂\)、入射波の速度を\(v₁\)、屈折波の速度を\(v₂\)とすると、$$\frac{\sin\theta₁}{\sin\theta₂}=\frac{v₁}{v₂}$$と表される。

さて、これを今回の場合にあてはめてみましょう。今回の屈折波は水平に走るので、屈折角は\(90^\circ\)です。モホ面での入射角を\(\theta\)として、\(\sin90^\circ=1\)なので、$$\sin\theta=\frac{v₁}{v₂}$$

となります。

公式を実際に導出

ではスネルの法則を確認したところで、実際に式を整理して公式を導出しましょう。

\(L₁,L₂\)を\(v₁,v₂,d\)で表す

まずは、L₁,L₂が邪魔なので、三角比を用いて\(v₁,v₂,d\)のみで表します。それぞれ$$L₁=\frac{d}{\cos\theta}$$ $$L₂=L-2d\tan\theta$$となります。

ここで三角比の公式を確認しておきましょう。今回使うのは以下の2つです。

$$sin^2\theta+\cos^2\theta=1$$

$$\tan\theta=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}$$

これらの式に\(\sin\theta=\frac{v₁}{v₂}\)を代入して整理すると

$$\cos\theta=\frac{\sqrt{v₂^2-v₁^2}}{v₂}$$

$$\tan\theta=\frac{v₁}{\sqrt{v₂^2-v₁^2}}$$

となります。これで、\(L₁,L₂\)を\(v₁,v₂,d\)で表すことが出来ました。

\(t₂\)を\(v₁,v₂,d\)で表して整理する

いきなり\(\frac{L}{v₁}=\frac{2L₁}{v₁}+\frac{L₂}{v₂}\)に\(L₁,L₂\)の値を代入しても良いのですが、かなりややこしくなりそうなので、中間地点を挟ます。\(t₂\)に\(L₁,L₂\)の値を代入すると、\(t₂=\frac{2dv₂}{v₁\sqrt{v₂^2-v₁^2}}+\frac{L}{v₂}-\frac{2dv₁}{v₂\sqrt{v₂^2-v₁^2}}\)となるのでこれを整理していきます。

$$t₂=\frac{2d\sqrt{v₂^2v₁^2}}{v₁v₂}+\frac{L}{v₂}$$

と整理できました。

式を整理して\(d\)を\(v₁,v₂,d\)で表す

\(t₁=t₂\)に\(t₁=\frac{L}{v₁}\)と\(t₂=\frac{2d\sqrt{v₂^2v₁^2}}{v₁v₂}+\frac{L}{v₂}\)を代入した、\(\frac{L}{v₁}=\frac{2d\sqrt{v₂^2v₁^2}}{v₁v₂}+\frac{L}{v₂}\)を\(d\)について解いていきます。

モホ面の深さを求める公式

$$d=\frac{L}{2}\sqrt{\frac{v₂-v₁}{v₂+v₁}}$$

を導出することが出来ました。

最後に

今回は、モホ面の導出をやってきました。僕もつい最近勉強したばかりですが、参考になればうれしいです。一緒に地学を学んで豊かな人生を送っていきましょう。

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